技能でなく、礼儀を重んじる子育てとは

 

 

4才でスノーボードを始め、数々の大会で入賞した後、今年の6月、弱冠10才にして最年少タイ記録でハーフパイプのプロ認定を受けた天才スノーボーダー嶋崎玖。

スノーボードメーカーのトップブランドBurtonとスポンサー契約を結ぶなど、”プロ顔負け?いやもう既にプロ”の恐るべし小学6年生がここ豊岡にいます。今回は、スノーボードで脚光を浴び、夢を実現するために親元を離れ海外で厳しいトレーニングに励む息子玖君を日本で温かく見守るお父様の学さんにスポットライトを当て、人との絆、親子との絆など伺います。    

 

ー笠原:「玖君って珍しい名前ですがお父さんが付けられたんですか?」

 

ー嶋崎さん:「僕が野球をやっていたので、最初は「球」という漢字にしようと思いましたが、最終的には黒く輝く宝物という意味のある「玖」にしました。玖がスノーボードを始めたきっかけは、夫婦でスノーボードのインストラクターをボランティアでしておりまして、神鍋のナイターで滑っているうちに夢中になったようです。」

 

ー笠原:「学校の先生をされていらっしゃるということですが、最近の生徒さんはどうですか?なにか苦労などあれば教えて下さい。」

 

ー嶋崎さん:「そうですね。こちらが良かれと思ってやることが果たして本当に生徒が求めているものかどうかを常に自問しないといけないと思っています。例えば、もっと学力をつけさせたい!って思うと、必然的に宿題が多くなるのですが、そうなると学校から帰って寝るまでのわずかな時間がすべて宿題に充てられてしまう。「もうやった?もう出来た?」という親の声に子供達は常に追い立てられ、余裕がなくなってしまうんですね。ですから学力は宿題でカバーするのではなく、授業重視でやっていくことが必要だなと思いますね。また最近は自尊心が低い子が多いような気がします。自信がない事ははじめから自制してしまうんですね。本来、子供は認められたがっているんです。 でも悪いレッテルを一度貼られるといい事も出来なくなってしまう、そんな子が自信をつけることが出来るような場の設定や、僕なりの応援が出来たらと取り組んでいます。」

 

■ 教師と経営者の共通項

 

ー笠原「そうですね。ある一点だけを見て「あいつは悪い奴だ」とこちらの価値観で判断してその人の全人格までも否定してしまおうとする場合がありますね。人は、親や上司といった上の人間からの指導の仕方によって人間形成されます。商品でも同じです。例えば壊れた商品でもそこに価値を見出すことで売れることがあるんですよ。お話を伺うと、「人をどう活かしていくか」という部分では先生も経営者も一緒だなと思いました。

子供って好きなゲームがあると親に隠れてでも何時間でもやりますよね。一つ一つクリアしていくゲームの楽しさがあります。同じように勉強も仕事もゲームのごとくすると楽しくなるものです。がむしゃらに何かに没頭するというのは達成感があります。その達成感を体感できることがつまり楽しみになります。人は何によって成長するかというと成長が体感できた時です。

絆工房は、ゲーミフィケーションといって、ゲームをするが如くに仕事をするという経営理念があります。普通、人は休み明けの月曜日は仕事に行くのが憂鬱になりますが、月曜日が待ち遠しくなる会社になるよう環境づくりを整えることを経営者として常に考えています。

嶋崎さんのところはご夫婦で決めた子育てのルールなどあるんでしょうか?」

 

 

■ 目的と目標は違う。
人生において大切なこととは

 

ー嶋崎さん:「そんな大げさなことではないのですが、何か一つのことをこつこつと続けることが自信にもつながると思いますから、4才からずっと日記をつけています。まだ字が書けない幼稚園の頃は、妻がそばで一緒に書いていましたね。時間がない合宿は終わってからまとめて書いてますが、自分がその日何をしたかを振り返って記録していくという日記は続いてますね。 それから、出来る、出来ないといった技能レベルでは叱りませんが、挨拶や感謝の心を忘れた時には叱ります。

例えば、リフトを降りる時はスタッフの人に「有り難う」と挨拶すること、ボードをぞんざいに扱わない、といったことです。今の息子を育てたのは、なにも私たち親だけでなく色んな人たちが育ててくれました。

多くの人の支えによって自分の今があるということを忘れずにいるということです。夢はオリンピック出場のようですが、そこに至るまでの人との絆を大切にしていって欲しいと思います。オリンピックが目標にはなってほしくないと思います。外国での合宿で出会った様々な国の友達との絆を大切にして欲しいです。そういう友達は玖の人生で本当に財産になると思っています。」

ー笠原:「目標と目的は違いますからね。目標はあくまで通過点に過ぎません。そして人と人との絆は、本能だと思います。脳のクセに” 生きたい”、” 知りたい”、” 仲間になりたい” というのがあるそうです。生きたいと知りたいが結びついて発生したのが科学、知りたいと仲間になりたいで発生したのが文化、そして仲間になりたいと生きたいが結びついてうまれたのが宗教です。

これからの時代は人間力が今まで以上にものをいう時代になります。玖君のように若い時から海外に出て違う価値観を持っ帰ってきてくれる若者がどんどん増えて欲しいと思います。井の中の蛙にならず、よそ者、馬鹿者、変わり者、そして若者が地方や日本の意識をどんどん変えていって欲しい、玖君も是非世界で活躍してそこで学んだ異 文化価値観を日本に持ち帰って新しい風を吹き込 んでほしいですね。有り難うございました。」